PROJECTs


1.  思春期における自尊感情の変化パターンと問題行動の関係   

科学研究費助成 基盤研究(B) 2017-2020年度 「思春期における自尊心の低下と内在・外在的問題との関係」

 

小学4年生〜中学3年生を対象に6年間12時点にわたる縦断研究を行っています。それによって、どの時期のどのような自尊感情の変化および変化の仕方が、思春期の内在的な問題(抑うつや自傷行為)と外在的問題(いじめや非行)に影響を与えるのかを検討します。これまでの研究は、自尊感情の高ー低、安定ー不安定性という視点から、様々な問題行動との関連性を検討する研究が多かったですが、それらの視点に加え、新たに「どの時期のどのような自尊感情の変化の仕方が問題行動に影響するのか」という「発達パターン」という新たな視点を加えたいと思っています。

(報告) 

OECD Future of Education and Skill 2030のStudent Agency  for 2030 ”Self-esteem during adolescence”

 

2. いじめに関する総合的な研究

日工組社会安全研究財団 一般研究助成 2017年度「いじめの深刻化の要因の検討とリスクアセスメントツールの開発」

 

いじめを①発生、②深刻化、③解消、④予後の4つのプロセスとしてとらえ、主に②〜④の研究を進めています。

②深刻化の研究:どのような特徴をもついじめがより深刻化しやすいのか、そのリスクを評価するための基礎資料を提供し、アセスメントツールを開発することを目的としています。これにより、どのような特徴をもった、あるいはどのような状況下でいじめが生じている場合、より緊急性が高いのか、また担任のみならず、他教員、他機関の介入が必要になる可能性が高まるのかを評価する指標づくりをしています。またこの結果にもとづき、現在はスタンドバイ株式会社と共同で、アプリを開発し、実証実験を行っています。

③被害解消の要因:どのような時にいじめの被害が解消するのか、特に教職員の要因や関わりに注目して研究を行っています。またそれ以外の要因として、環境的な要因についても注目しており、席替えが関係性攻撃(仲間はずれや無視など)に及ぼす効果なども検討しています。

④予後のケア:いじめは被害が解消したら終わりということではなく、被害者は長期間にわたって、影響を受けます。したがって、いじめ被害の解消のみならず、その後のケアとして、どのような関わりが必要なのか、逆に、どのようなときにトラウマ化していくのかなどについても研究を進めています。

 

 

3. 不登校に関する研究

 

様々な理由から学校に通うことが困難な児童生徒が、在籍する適応指導教室を対象に大規模な調査を実施することで、適応指導教室が効果的に機能するための条件と課題について検討することが目的です。具体的には、児童生徒には年2回の縦断調査を実施し、児童生徒の状況の改善に資する要因を明らかにします。また、教室の指導員・教員、および保護者への横断調査を通して、教室が機能するための条件を探るとともに、この制度が抱えている課題を明らかにしたいと考えています。

 

 

4. 子ども白書のアンケート分析

 

さっぽろ子ども・若者白書をつくる会と長野の子ども白書が毎年、札幌市の小学4年生〜中学3年生に実施しているアンケート調査の分析を共同でしています。札幌では、2015年度は調査への参加者が約500名であったのが、2016年度は3000名弱の方が調査に協力してくださいました。今後もこの調査を毎年つづけていく予定です。札幌市と長野県の小中学生の「現在」を明らかにするとともに、経年による変化を追うことで札幌と長野の小中学生の時代・地域による「変化」を明らかにすることが目的です。

 

 

5. 授業が生徒の意識・認識に及ぼす影響

 

国立大学法人の附属中学校との共同研究です。中学校が今年度から実施するカリキュラム体制が、児童生徒の意識や認識にどのように影響するのかを3年間の縦断調査によって検討します。具体的には学習動機づけや協働に関する意識の変化、批判的思考態度およびそれらの関連性について検討していきます。また学校享受感との関連性や欠席行動との関連をみることで、授業と学校適応との関係についても検討したいと考えています。

 

 

6. 自分の発達に対する中学生自身の分析

 

中学生を対象にとった縦断データの結果を中学生自身に分析をしてもらうというプロジェクトを平成26年度から新たに行っています。具体的には、思春期における自尊心の低下とジェンダー差(女子のほうが低下する)について、自分たちの学校のデータを示し、その理由について分析・討論を行ってもらうという形式ですすめています。

7. その他

 

  (1)思春期・若年期女性が抱える問題

札幌市子ども未来局、北海道大学教育学研究院・教育福祉研究室と共同で札幌市の若年期女性(高校生〜24歳)を対象にした調査を行い。学校や家庭、職場や恋人・配偶者からの被害等の実態調査を行いました。

(報告書)

札幌市思春期・若年期の女性を対象とした意識に関する調査

 

(2)子どもの貧困調査

札幌市・北海道が行っている子どもの貧困に関する調査にも参画しています。主に学校適応や問題行動に関わる部分の分析、自由記述の分析を担っています。

(報告書)

道内の子どもの貧困の現状

「札幌市子どもの貧困対策計画」策定に係る実態調査 

 

  (3)コロナ休校が子どもに与えた影響

   CoStep主催のサイエンスカフェでその成果を発表しました。

   (下記の動画)